感染症に対する免疫を作るために体内に入れる、無毒化または弱毒化した病原体をワクチンと言います。ワクチンの接種によって体内で免疫が作られますので、実際に病気に対して抵抗力ができるのは、接種後2,3週間後の話です。
ワクチンを接種しても、その病気にかかる可能性はゼロにはなりませんが、次の2つの理由から、接種しておくべきだと言えます。
●かかる可能性を低くする。
可能性はゼロにはなりませんが、低くなるのは確かです。
●かかった時に軽傷で済むようにする。
体内に免疫(抗体)があるので、無防備な状態よりも軽傷で済む可能性が高くなります。
通常、ワクチンを接種したその日は激しい運動を控えます。顔がはれたり、おう吐や下痢などの異常が現れたら、アレルギー症状かも知れませんので、すぐに動物病院に行きましょう。そう言った意味では、ワクチンは午前中の早い時間に行く方がいいかもしれません。
普通子犬は、母親から移行免疫という免疫を授かっています。これは、母犬が子犬を産んでから最初に出す母乳に含まれていて、それを飲んだ子犬は、免疫を持っている状態になります。個体差はありますが、その効果は70〜80日程度持続します。
この移行免疫の残っている時にワクチンを接種しても、ワクチンの病原体が移行免疫によって倒されてしまい、子犬自身の免疫が作れません。そのため、移行免疫が確実に無くなったと思われる90日目あたりに接種をするわけです。
しかし90日目の1回だけにすると、70日以内に効果が切れた犬は1ヶ月間無防備です。それでは危険なので、早めに切れてしまうことを考えて、70日目あたりに1回接種しておくというわけです。かつては3回接種していましたが、今は2回のケースの方が多いようですね。
狂犬病のワクチンは、生後91日を過ぎた犬には、1年に1度受けさせなくてはなりません。これは法律で義務付けられており、受けさせないでいると20万円以下の罰金が定められています。
狂犬病以外に、9種類の犬の感染症に対するワクチンが開発されています。
●犬ジステンパー
致死率の高い恐るべき感染症。神経組織が侵される。治っても後遺症が残ることが多い。
●犬伝染性肝炎
肝炎を起こし、嘔吐や下痢を引き起こす。子犬では突然死することも。
●犬アデノウイルス2型感染症
ウイルスにより呼吸器が侵される。
●犬パルボウイルス感染症
急性大腸炎を起こし、ひどい下痢やおう吐を伴う。致死率・感染力が高く危険。子犬では突然死する心筋型というものもある。
●犬パラインフルエンザ
呼吸器が侵される。咳をするのでケンネルコフとも言われる。
●犬コロナウイルス感染症
腸炎を起こす。他の病気との併発した時に危険。
●犬レプトスピラ感染症
細菌の感染が原因。いくつかの型があり、犬では次の3種を予防できる。それぞれワクチンは別のもの。人間にも感染する「人畜共通感染症」です。
・黄疸出血型
肝臓へのダメージ。口の中の皮膚組織などが黄色く変色(黄疸)したり、皮膚に点状の出血が見られる。
・カニコーラ型
腎臓のダメージ。嘔吐・高熱。
・ヘブドマティス型
嘔吐・高熱。